羽賀派 平成19年6月更新

   大森流居合解説    メインページへ戻る    
                                                                                         
一本目  初発刀    居合に戻る
 

意 義
吾が前面に対座せる敵の害意を感じ機先を制し、直ちにその顔面叉は二の腕等に斬りつけ、逃げんとする所を直ちに上段より斬り下ろして勝つ意なり。

動 作
正面に向い正座する。正座の場合、膝は約一握りの間隔を置き、つま先は親指を重ねる以上に深く重ねない事。姿勢を正し手を膝の上に置き、十分気の充ちた時、左手を静かに鯉口近くを握り、左手親指の腹にて鯉口を切る。右手も同時に鍔元近くの柄を静かに握り、両膝を静かに立てると同時に刀を抜き始める。この場合,両足先は肩幅ほどに開き爪立て、叉膝を立てる時は,腰が曲がらぬよう腹筋にて膝立てをする。敵の動作に十分気を配り一分のスキの無い態勢を作り切先が鯉口まであと四、五寸位の時、刀を外側へ倒すと同時に横一文字に抜きつけ、叉同時に右足を一歩踏み出す、この場合左手は鯉口付近を握ったまま体から小指が離れないよう充分後方に引く事。この時特に注意することは身体をひねらず、左肩と共に左手を引く事である。抜き付け後直ちに抜き付けの刃筋を通って左に大きく剣先を下げぬよう上段に振りかぶり、同時に左手の鞘も元に戻しつっその流れで上段に振りかぶった柄に手を添え、叉左膝も同時に右足のかかとの辺りへ引き付ける。次に逃げる敵を追うように大きく一歩右足より踏み込んで敵の真向に斬り下ろす。この場合右足の角度は足首と膝頭の線が真直ぐになり姿勢も真直ぐに成るよう左足を送り,左足裏が直角に成るよう爪立てる事。次に充分なる残心を以って左手を静かに柄より離し左の腰(帯の付近)に軽く当てると同時に刀を持った右手を返し、(刀の刃は自分の左方へ向く)次にその位置より右手を自分の肩の高さに右方に開き(この時切先は後方を突き上げる気持ちで拳は右肩右方水平の位置に留める)刀は右拳のところから身体の向きと並んだ形で正しく水平に保つ、それより右ひじを曲げ右拳を右頭部のビンの当りにとり刀を頭上に廻して剣先を身体の前斜め下に向くように振り下ろし右拳を握り締めて血振りをし、同時に中腰に立ち上がる。次いで左足を右足に引き付け踏み揃えて直ぐに右足を大きく一歩後方に引き、左手にて鯉口近くを深く握り刀を静かに納めつっ右膝を徐々に下ろし床に付くと同時に刀を納め終わる。静かに立ち上がると同時に左足に右足を揃え直立の姿勢を取り、左足より小さく三歩退り、静かに袴をさばき正座して次ぎの動作に移る。

注意イ   以下特に記するものの他、抜き付け、斬り下ろし、血振い、納刀の要領は之に準ずる。
注意ロ   正座して運動を起こすと同時に足先を肩幅程に爪立てることを忘れぬこと。
注意ハ   動作中は身体の中心を保って身体を前後左右に曲がらぬよう気を付ける事。
注意ニ   跳び足、跳ね足に成らぬよう気を付ける事。(抜き付けの時は勢い良く踏み出すが特に記述無き時はすり足と思うべし)
注意ホ   納刀前の脚の踏み替えは、体が上下しない様、膝を少し曲げ中腰で、「能」のすり足の如く行うと良い。

二本目 左 刀        居合に戻る
 

意 義
吾が左側に座している敵に対して行う業にして「初発刀」と同じ意義なり。

動 作
正面に向い右向きに正座し刀を抜きつつ右膝頭を中心に左に廻り正面に向い、左足を踏み出すと同時に抜き付け、更に段より敵の真向へ斬りつけ次に「初発刀」と同様な要領にて血振いを為したる後、右足を左足の位置に踏み揃え左足を大きく一歩退き納刀する。以下所作は「初発刀」と同じ。

三本目 右 刀        居合に戻る
 

意 義
吾が右側に座している敵に対して行う業にして「初発刀」と同じ意義なり。

動 作
正面に向い左向きに正座し刀を抜きつつ左膝頭を中心に右に廻り正面に向い、右足を踏み出すと同時に抜き付け、更に上段より敵の真向へ斬り下ろす。以下「初発刀」と同じ。

四本目 当り刀        居合に戻る
   

意 義
吾が後方に吾と同一方向に座せる敵に対して行う業にして「初発刀」と同じ意義なり。

動 作
正面に対し真後向きに正座す、右膝を軸として刀を抜きつつ左へ廻り正面に向い、左足を踏み出すと同時に抜き付ける、以下左刀と同じ。尚廻り込み方、足の踏み方等も左刀と同じ。

五本目 陰陽進退    居合に戻る
      

意 義
吾が正面の敵に抜き付けたるも不充分、逃げるを追って上段より斬り倒したるに別の敵の攻撃し来るを抜き打ちにて斬り付けるも不充分、退る敵を追って上段より斬り下ろし勝の意なり。

動 作
正面に向い正座し、正面に向い抜き付け(右足を一歩踏み出す)直ちに敵を追って中腰に立ち左足を大きく一歩踏み出すと同時に上段より斬り下ろす、刀を右脇横に開いて血振いと同時に右膝頭を床に付け静かに納刀、この場合、納刀しつっ左足を静かに右足に引き付け右足かかとに臀部を乗せる。鍔元二寸程まで納刀した時、別の敵より攻撃を受け左足を充分に後方へ退き横一文字に抜き付け敵の退るを追って右足より一歩前進真向より斬り下ろす。以下「初発刀」と同じ。

注 意    刀を右脇横に開いての血振いと納刀は、長谷川英信流と同じ。

六本目 流 刀        居合に戻る
  

 

意 義
吾が左側面より不意に頭上に斬り付けて来るを敵の刀を左に受け流し身体を右斜め前方に開き敵の流れるを斬る。(この場合敵の動作により斬る部位は腰、肩等に分かれる)

動 作
正面に対し右向きに正座す。柄に手をかけると同時に左足を一歩踏み出し同時に刀は峰を外側に向け刃は自分の方へ向け、ほとんど水平(時により剣先を下げて受け流すやり方も有る)に近い具合で頭上僅か前方にて敵刀を受け流し、身体を右斜 め前方に開く如く右足を開くと同時に、刀は肩に取り(刀を肩に担ぐ様に、右手の拳が耳の横ぐらいの位置で、刃を外に向け横水平に体の向きに並んで構える)敵の流れる処を左足へ右足を引き付け,中腰で両膝を開き同時に諸手にて敵の腰部を斬り、次ぎにそのままの姿勢で正面に向き直り(その時刃筋を正眼に直す) 左足を後方に大きく引くと同処から物打ちの鎬あたり(刀の長さによる)を右膝頭上部に乗せ左手を充分延ばし前方肩の高さに保つて右手を逆手に持ち替え、刀を返して峯を鯉口に持って行き静かに納刀し、終わる時左膝が床に着くようにして終わる。以下同じ。

七本目 順 刀        居合に戻る
 

意 義
吾が正面四尺位の位置に左向きの切腹人がおり、その介錯をする意なり。

動 作
正面に向い正座。顔は正面に向けたまま身体を静かに右に向け、左膝頭を軸にして右足を一歩前に踏み出し静かに抜刀、左足へ右足を踏み揃えながら立ち上がり刀は右肩の上に(拳が耳の横くらいの位置で刀は45度程の角度)位置し、機を見て諸手上段に振りかぶり、大きく右足を一歩踏み込んで首を斬り同時に刀を手元に僅かに引き刀を正面に戻し、以下「流刀」と同じく残心を示し「流刀」と同じ順序で納刀して終わる。

注意イ   首を斬る時、首を落とさぬよう剣先をやや上げ気味に斬りこみ、刀を手元に引く時刀を水平に保つ。皮一枚を残す気持ちで首を落とさぬよう、介錯と打ち首の違いを理解すること。

注意ロ   斬り付けの機会は切腹人の態度で判断し、三宝の刀を取ろうとする時、刀を腹に刺した時、切腹後刀を三宝へ戻す時、以上三回の機会が有ると云われて居ります。

注意ハ   切腹人は死に直面しており、その心情を推し量り、切腹人の心を乱さぬよう気を配り、静かに行うこと。

八本目 逆 刀        居合に戻る

 

意 義
吾が正面より斬り込み来る敵の刀を大きく一歩後退して外し(敵刀を磨り上げる気持ちで)敵の退く処へ一撃を加えるも不充分、直ぐに追撃して勝の意なり。

動 作
正面に向い正座。腰を上げ足を爪立て刀に手をかけ鯉口を切り敵の動作を注視し右足を左膝頭の処へ踏み出し、左足を大きく一歩後退と同時に右足も退って左足と踏み揃えともに刀を抜き放ち左肩辺りにて磨り上げる気持ちで諸手上段に構え相手の剣を見切り、仕損じて退く敵に右足を大きく一歩踏み出して斬りつける(この場合切先は概ね敵の肩の高さ)不充分のため第二撃を左・右足と追って右足の踏み込みと同時に上段より斬り下ろす(この時は敵の腰の高さまで斬る)中段に構えると同時に左足を右足に揃える。次ぎに右足を大きく一歩後退すると同時に上段に構え、静かに上段より刀を下ろしながら右膝を床に着ける(敵を床に押さえ込む気持ちで)。この時刀  は床上一尺程のところでほぼ水平に保つまで下ろし、充分なる残心を示し右手の柄を逆手に持ち替え、左手は柄より離し右手は刃を前方に向け拳を胸の前に持って、左手を刀の中程の峯に平手にて当て、右手を右肩の高さに引き上げる。この場合右肘は肩と同じ高さに張り、左手はたなごころを物打ちあたりまで刀の棟にて滑らす(左手は動かさず)。刀を横水平に持ち替え左手にて鯉口を握り「順刀」の要領にて納刀する。

九本目 勢中刀       居合に戻る
 

意 義
吾が右手の方より上段にて仕掛け来る敵の両甲手を切り払い後退する敵を追って勝の意なり。

動 作
正面に対し左向きに正座する。左膝頭を軸として右に廻り右足を一歩踏み出まで)。この場合腰は充分に延びきらぬよう、直ちに右足に左足を引き付け右足より大きく一歩踏み込んで逃げる敵の正面を切る。血振りは立ったまま行い、納刀は「初発刀」の要領による。

十本目 虎乱刀       居合に戻る
 

意 義
敵の逃げんとするを追い討ち勝の意なり。

動 作
正面に向い直立する。刀の柄に手を掛けると同時に鯉口を切り同時に左足を半歩前に踏み出し、右足を大きく踏み出すと同時に初発刀の要領にて横一文字に斬り左足を踏み出すと同時に上段に振りかぶり右足を踏み込んで敵の腹まで真向から斬り下ろし、直立のまま血振いをし、右足に左足を踏み揃え右足を半歩後方に退き納刀。左足へ右足を引き付け、同時に柄から手を放し、左足より小さく五歩程度で元の位置に戻る。

十一本目 陰陽進退替手   居合に戻る
 

意 義
五本目陰陽進退と同じだが、第二の敵が吾が右足脛に斬り付けて来るを刀の鎬で打ち払い(切り落とす形)、敵の仕損じて退かんとするを刀を返して上段より斬り付けて勝の意なり。

動  作
第一の敵に対するは陰陽進退と同じ。第二の敵が吾が右足の脛めがけて斬り付けて来るのを右手手の内を替えて(刃はこの際上を向く)柄を真上より握り、右斜め前に抜きつっ左足を大きく一歩後方に退き同時に左手の引き手を充分に引き共に刀を抜き放ち、右膝をかばうがごとく刀の鎬で敵刀を打ち落とす如く受け止める。次ぎに直ぐ左膝を右足近くの床に着けると共に諸手上段に振りかぶり、右足を一歩進めると共に敵の真向に斬り下ろす。以下「陰陽進退」と同じ。

十二本目 抜 刀     居合に戻る

 

意 義
吾が正面に近接して対座する敵の害意を認め直ちに真向より抜き打ちにして勝の意なり。

動 作
正面に向い正座。左にて鯉口を切り,抜きながら両足を爪立て腰を充分に延ばし右斜め横の方へ刀を抜き左肩側面を突き刺す気持ちで,諸手上段に(この時引き手の左手は鞘を戻しつつ柄に手を加え諸手上段に)振り被り敵の腹部まで真向に斬り下ろす。その時斬り落としの反動で両膝を開く。次いで刀を右手に開く血振いをし、納刀しつつ臀部をかかとの上に静かに下ろし納刀も終わる。開いた両膝を元に戻し正座して終わる。

 

一剣会    羽賀道場

                     羽賀凖一作成  

                                   藤森将之加筆      平成十六年一月十三日


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