羽賀派 長谷川          平成19年7月更新                  メインページへ戻る    

                英信流居合解説       

一本目  横 雲      居合に戻る

意 義
吾が前面に対座せる敵の首叉は二の腕等に斬りつけ、直ちに上段より斬り下ろして勝つ意なり。

動 作
正面に向い立ち膝に座る。座り方は左足のくるぶしに臀部を乗せ、右足は膝を立て足裏を上に向けぬよう床に向け、身体の中央よりやや左よりに引き付け(右足親指が中央に来るよう)座る。両手の拳を軽く握り、両膝の上に静かに置く。姿勢が前傾に成らぬよう注意すること。以下九本目まで座り方は同じ。 気充つれば左手を鯉口に取り、右手を柄に掛け、刀を抜きつつ右足を踏み出すや横一文字に抜き付け直ちに諸手上段に振りかぶり、敵の真向に斬り下ろす。
 ※「直ちに刀を右に開き血振いし、刀を納めつつ右足を左足に引き付け(この時引き付けた右膝は床に着けず膝頭を右方向に向ける)爪立てた左足の踵に臀部を下ろすと同時に納め終わり、徐々に立ち上がりつっ右足を一歩前に踏み出し左足も揃えて直立し、左足より一歩後方に退り、立ち膝に座り次ぎの業に移る。」

注意イ  立ち膝の時の血振いは右に開く血振りの仕方である。この動作は拳を開き刃を右方に向け刀は身体と平行に並んで、切っ先は鍔元より僅かに下がり、刃は上を向かず横より気持ち下向きにする。位置は斬り落とした位置の真横、右膝外にやや低めに保つ。血振いに移る場合右手拳を返す動作は刃先の動きと共にかなり強く振り、左手は直ちに左の腰帯の当たりに取る。注意ロ約三分の一刀を納めたあたりより右足を左足に引き付けるが、この際特に気を付ける事は腰が曲がることである。絶対に腰を曲げ腹を引く事なく体の中心を保つことが大切である。
 注意ハ  納刀は刀の三分の二程までは早めに納刀し、後は腰を下ろすのと同じにゆっくりと納める。
 注意ニ  以下特に記す以外、座り方、血振い等は之に順ずる。

二本目  虎一足     居合に戻る

意 義
吾が正面に対座している敵が吾が右脚を薙ぎ付けに来るを吾が刀にて受け止め(敵刀を打ち落とす気持ちで)敵の仕損じて退かんとするを上段にて斬りつけて勝の意なり。

動 作
正面に向い立ち膝にて坐り、刀を右斜め前に抜きつつ静かに立ち上がり、敵が右脚に斬り付けて来るを察知し切先四・五寸残る位まで抜くや素早く左足を大きく一歩後方に退き、同時に左手及び左肩を充分に引くと共に刀を抜き放ち、(この時手の内で柄の握りを刃が上を向くように握り替える。)左鎬にて敵の刀を上から打ち落とす如く受け止め、叉直ぐに右足近くに左膝を着くと共に手を替えて諸手上段に取り、一歩右足を踏み込み、敵の真向に切り下ろす。 以下※「横雲」と同じ要領にて納刀し終わる。

三本目  稲 妻      居合に戻る

意義吾が正面の敵が上段にて攻撃せんとするその上段の甲手を切り払い更に真向より斬り下ろして勝の意なり。

動作正面に向い立ち膝にて坐る。刀を抜きつつ徐々に立ち上がり左足を一歩大きく退くと同時に右手を充分に延ばして敵の上段の甲手を打ち払い(この時敵の左右の甲手を斬るつもりで、剣先が敵の頭より少し高めに、右腕は肩か乳の高さに真直ぐ伸ばす。尚右手甲を右に曲げると両篭手を斬る刃筋になる。)左膝を右足近くに着けると同時に諸手上段に振りかぶり、 一歩右足を踏み込んで敵の真向に斬り下ろす。以下※横雲同様血振い納刀して終わる。

四本目  浮 雲      居合に戻る

意 義
吾が右横に坐せる敵の害意有るを認め、去ると見せて吾れ左斜め前に開いて立ち上がり、敵が刀に手を掛ける処をその胸元に斬りつけ、右に引き倒し上段より胴を両断して勝つ意なり。

動 作
正面に対し左向きに坐り、左手親指を鍔に掛け右手を軽く右足ももに置きながら静かに立ち上がりつつ刀を左前に鞘ごと少し引き抜くような気持ちで左足を一歩左斜め前に踏み出し、不意に身体を右敵に向け、鞘諸共に敵の頭上を越すようにし、右手も柄に掛けながら右脇腹に抱え込み、この時同時に左足踵が右足先に接するよう(この時左右の足は交差   した如く両膝は開き、くの字形になり、叉左踵は右つま先の上に浮かす。)進ませ(この時体は直立に近きも左右の膝   は伸びきらぬ事)少し腰を落としながら、鯉口を切り刀を横に抜きつつ左手の引き手を充分に引き、切先二・三寸で鞘   離れする時、充分に腰を左にひねり敵の胸部、二の腕にかけて斬り付ける(この時体は初めに坐った方向を向き、顔は   敵の顔を見る。叉この時左足首は反転して足の甲が床に接する事になる)。直ぐに体を右に廻し(この時刀は斬り付け   たまま動かさぬこと)刀の棟に左手を開いて当て、右足をやや右斜め後方に大きく引きながら斬り付けた刀で敵を押し   倒す如く引き倒し、刀の棟に添えた手で跳ね上げるような気持ちで左前方より頭の上を廻し右前方斜め前まで廻しつつ   左手を柄に添える、同時に右膝を床に着け、(この時右手を肩の高さに充分腕を伸ばして構える)。 次ぎに諸手上段に取ると同時に右膝を左踵後方に寄せ、左足を右膝の前方に踏み替えて倒れし敵の胴へ斬り付ける。 次ぎに※横雲と同じく血振い納刀して終わる。

注意イ  敵の胸部への斬り付けは両膝を開き、体は低く沈め刀は切先を上がり目にし腰を充分に捻り、左手を思いきって後方に引   き、鞘は体の後方にコジリが斜め上に向き、引き手の小指が体より離れぬ事。
注意ロ  敵を引き倒す場合、敵の位置を良く考えて行えば刀の位置はおのずから自然に決まってくる。

五本目  山 颪     居合に戻る

意 義
浮雲と同様に右横に居る敵の右手が刀の柄に掛かろうとするのを察知し、直ちに右に廻って吾が右足で敵のもも叉はその近   くを踏むと同時に吾が刀を返しその柄頭にて敵の左手叉は柄元を打ち、返す形で顔面などに目潰しを食らわせ、ひるむ処を   胸元に斬り付け引き倒し、上段より胴に斬り付け勝つ意なり。

動 作
正面に向い左向きに坐る。親指を鍔にかけ左膝を軸に右に廻り、敵のもも叉はその近くに右足を踏み出し、同時に左手の刀を鞘ごと少し引き出しながら手を返し(この時刃が下を向く形ち)吾が刀の柄頭にて敵の左手叉は柄元に一撃を加え、刀を抱え込む時に柄頭で顔面等にも一撃を加える気持ちで吾が右脇腹に深く抱え込み(この時左手は親指を鍔にかけたまま片手で一撃を与え、右手は軽く右脇腹を押さえ、抱え込むと同時に右手を柄にかけ鯉口を切る)、次ぎに右手で横に刀を引き抜き、左手は充分に引き手を為し、切先二・三寸の所まで抜いた時左膝頭を右足の踵の所へ引き付け、同時に腰を充分左 に捻り腹を出すようにして刀を抜き斬り付ける(この場合刀を抜くに敵の体が前に有るので充分吾が体に近く抱き込むよう   にする)。抜き付けは敵の胸部に斬り付け(この時顔は敵を見て体は左に向く)、次ぎに斬り付けた刀を動かさずに体を右足つま先を軸に右に廻りながら後ろ向きに成るほどに反転し同時に左手の平を刀の棟に当てがい、右足踵は左膝頭に付けたまま出来るだけ右膝を右に開き浮雲と同様に敵を引き倒し、刀を左方向に廻しながら右足を右斜め前に踏み出しその踵の後ろに左膝を引き付け、同時に正面を向き上段に振りかぶる。一歩右足を踏み出しながら敵の胴に斬り下ろし、血振い納刀して終わる。

六本目  岩 波      居合に戻る

意 義
吾が左側に近接して坐る敵の動向を察知して、その機先を制して直ちに左に向き敵の横腹を突き、引き倒し、背中叉は胴を斬り勝つ意なり。

動 作
正面に対し右向きに立ち膝で坐る。刀に手を掛け鯉口を切り、静かに左足を大きく後ろに引きながら、右手よりも左の引き手で刀を抜くようにして低い腰の姿勢で、切先が鯉口の所まで出た時、切先を左手で摘むようにして左膝頭を床に着け、直ぐに左膝を軸に右足先を左膝に引き付け左に向き(正面になる)刀は右足太ももの脇に切先が膝より僅かに前に出る形に水平に保ち、左手は刀の物打ち当りの峯を平手にて軽く押さえ、直ぐに右足を少し踏み出すと同時に敵の横腹を突く(右手で三十センチ程突く)。直ちに刀を引き抜き刀を吾が前に横に取り(手はそのまま峯に当てておき右足は左膝頭に引き付ける)。 敵の背後から引き倒す(この時右足は爪立てて踵を左膝に付け、左膝を軸に九十度体を廻す)直ぐに右足を右斜め前に出すと同時に浮雲同様、刀を廻し右足に左膝を引き付け、正面に向きなをり上段に振り被り右足を踏みしながら敵の背叉は胴に斬り付け、血振い納刀して終わる。

七本目  鱗 返      居合に戻る

意 義
吾が左に坐す敵の機先を制してその首の辺りに斬り付けて勝つ意なり。

動 作
正面に対し右向きに立ち膝で坐る。刀を抜きかけつつ右足先を軸に、中腰にて左に廻り、正面に向くと同時に左足を大きく一歩引くや横一文字に斬り付け(大森流陰陽進退の二の太刀と同じ抜き付け)左膝を右足踵の処へ引き寄せながら諸手上段に振り被り、敵の真っ向に斬り下ろし血振い納刀して終わる。

八本目  波 返      居合に戻る

意 義
吾が後方に坐せる敵の機先を制し、その二の腕叉は顔面等に斬り付けて勝の意にして、大森流当り刀の業と同意儀なり。

動 作
正面に対し後ろ向きに立ち膝にて坐る。刀を抜きつつ右足先を軸に中腰で左に廻り、正面に向き直るや左足を大きく引き、刀を横一文字に抜き付け、以下鱗返しと同じ動作で終わる。

九本目  滝 落      居合に戻る

意 義
吾が後方に坐せる敵が吾が立ち上がる所、コジリを握りたるを感知し、その拳をもぎほどき敵の引きさがらんとする胸部をめがけ、刺し突き、まだ逃れんとするを追って更に真っ向に斬り下ろし勝つ意也。

動 作
正面に対し後ろ向きに立ち膝にて坐る。左手親指を鍔に掛け、右手は軽くももの上に置き、静かに左足を半歩肩幅程に開きながら立ち上がる。(この時すでに敵がコジリを握るを感知し、立ち上がりつつ鞘ごと少し左前に引き出す。尚顔は後方の敵を見、左足先は右方向を向く)立つや直ちに左足を右足前に半歩踏み出すと共に左手を下に押し下げながら円を描くような気持ちで、叉同時に腰の回転の捻りも加え、手の甲が胸の上部に付くように刀を抱え込み(これで敵の手は逆になり、こじりより振り切られる)直ぐに右手を柄に掛け親指で鯉口を切り、同時に右足を左足の左斜め前に踏み出すと同時に刀を上に鞘は下に引きながら、刃を上向きに直しつつ抜き放ち、(体は刀を抜くと同時に爪立て正面に廻り込み、切先を体に近く乳の辺りの高さに保つ)左足を大きく踏みこんで敵の胸部を上から刀を落とすように右手の手の内で刃を上に替えして突き、逃げる敵を追って直ちに諸手上段に取り右足より大きく踏み込んで真向から切り下ろす。(この時斬り下ろしの位置は中腰での腰のところまでで、刀を水平にすること)直ちに左膝を床に着け、血振い納刀して終わる。

十本目  抜 刀     居合に戻る

意 義
吾が正面に対座する敵の害意を認め直ちに真向より抜き打ちにして勝の意なり。

動 作
正面に向い正座。左親指の腹にて鯉口を切り,抜きながら両足を爪立て腰を充分に延ばし右斜め前方へ刀を抜き左肩側面を突き刺す気持ちで,諸手上段に(この時引き手の左手は鞘を戻しつつ柄に手を加え諸手上段に)振り被り敵の腹部まで真向に斬り下ろす。その時斬り落としの反動で両膝を開く。次いで刀を右手に開く血振いをし、納刀しつつ臀部をかかとの上に静かに下ろし納刀も終わる。開いた両膝を元に戻し正座して終わる。

注意   大森流抜刀と同じなれど、大森流の横方向に抜くのに対し比較的前に抜き、場合によっては抜く時に柄頭で当身を食らわしてから斬り下ろすやり方も有る。
 


一剣会    羽賀道場

                     羽賀凖一作成  

                                   藤森将之加筆      平成十六年一月十三日

 


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