剣 道                        メインページへ戻る

剣道のこと

剣道の元は刀を持って敵対する相手と生死をかけた戦いから始まっております。
それ故に真剣に生と死を考えない剣道は唯の竹刀運動で真の剣道とは言えないと思います。
現在剣道は防具も完備し稽古も他のスポーツより激しさも少なく、年間のけが人等の被害もあまり聞きません。
それに引き換え現代スポーツのサッカー・ラクビー・野球等は年間の負傷者は数知れず、場合によっては死者も出ることがあります。それを考えますといま少し剣道も激しさが有っても良いのではないかと思います。今我々が行なっている稽古は羽賀凖一先生より教えを受けた稽古で、世間から荒い稽古だと言われて居るようですが、せいぜい打撲傷ぐらいなもので、たまに真剣での居合いのため手を切るぐらいで、「手を切るくらいならまだ上達するよ。」と羽賀先生は笑っていたくらいなものです。
剣道は長い年月をかけて先人達が研鑽努力して、人を健康にし人間として社会に役立つ者に成長すると考え奨励してきたものと考えます。そして籠手・面・胴・突きを教えてきました。
なぜ生死をかけた戦いに、籠手・面・胴・突きにこだわるのでしょう、敵対する相手のどこでも切りつけ・打っても良いのではないでしょうか。確かに生死をかけた戦いにどこでも切りつけ・打っても良いのですが、私が考えるには武士がたしなみとして剣道や居合いの稽古をするうえで、この籠手・面・胴・突きで攻撃することが自身の態勢が崩れない一番良い姿勢で対応できるからだと思います。仮に足などに切り込んでいけば前かがみになり、相手に頭をさらけ出す結果となり姿勢も悪くなるとゆうことです。剣道の稽古を長く続けた方は、健康で社会に役立つ人々を多く輩出しております。これからも長く剣道を継承する上にも正しい姿勢で正しい剣道を考えて行こうではありませんか。
 

剣道の目的

剣道を始める目的は何でしょう?。人それぞれ目的は違うでしょうが、私の目的は「健康」でした。(羽賀先生も剣道を始める頃結核を患っていたそうですが、激しい稽古と正しい呼吸法を覚え、病を克服したそうです。)当時私の姉も結核を患い入院中で、私自身も虚弱体質で何とか健康な体に成りたいとの想いでした。後は羽賀先生の教えのごとく、正しい姿勢で正しい呼吸をし、生ある限り人として良き教養を身につけたいと考えております。
羽賀先生はよく富士登山を例にお話されました。富士登山の目的は頂上を極めることだと思います、その頂上を目指す登山道はいろいろな道があります。その道を選ぶのは自分自身です、そして良き道案内人に教えていただけば楽に早く目的地に到達できると言うことです。
我流で地図も持たずに登れば、道に迷い危険な目にもあいましょう時間もかかるでしょう。ですから剣道をするなら道場を探し、野球やサッカー等を始めたいならそのようなクラブを探し良き指導者に会うことです。
良き指導者とは私が考えるに「強く・上手い」方に越したことは有りませんが、それよりも人間としての行いが理にかなった方法で指導して下さる方だと思います。
我が師 羽賀凖一先生は始めに姿勢と呼吸を指導し又ものの考え方を教えて下さいました、剣道は二の次でした。
この様なことを考えますと目的を持たない行いは無意味なものと思われます。
 

剣道の基本

竹刀の握り方
   
剣道を始めるにはまず竹刀を持たねば成りません。竹刀を持つ手の握り方はまず金槌を握る手です、この握り方は小太刀を握るのと同じで、右手でも左手でも同じ握り方です。但し竹刀の場合は両手で握り身体の真ん中で構える関係上自然と手首が外に曲がる形になります。
人がものを手に持って何かを叩くか打つかするときは全て同じ握りかたです、刀・竹刀・バット・薪割り・餅つき・など全て同じです。
ただ持つ物の長さ・重さ・用途・等により持つ場所が違いますが握り方はおなじです。
現在剣道をおやりになっている方で防具を着けないで構えたとき・素振りをするとき良く見かけますが、軽く握ると云うことで右手の親指と人差し指の間に隙間がある握りをされておる方が見かけられますが如何なものかと思います、一度試し切りをして見たらお解かりに成るのではと思います。

打ち方  
握り方がお解かりに成りましたら次に面か籠手の打ち方です。これも金槌で釘を打つのと同じで最初はそおうと形良く手を伸ばして打つのです。
初めての人が両手でものを振ると両手の握力の違いから真直ぐ振り下ろせないものです、肩の力を抜いてそおうと打つのです。
釘を打つときも最初から力まかせに打つ人は相当経験をつんだ人です、初めての人は的を確認しながら徐々に力を加えていきます。
そして竹刀の振り方を覚え素振りの仕方を覚えることです。その時注意しなければならないのは正しい姿勢と振りかぶり方です。
正しい姿勢のことは別に述べます。振りかぶりは左手の握り拳が額より前に出ないよう頭上一握り上に竹刀を45度の角度に振りかぶります。
最悪でも水平で振りかぶるのを限度とし、決して剣先を落とすことなく振りかぶり、素振りの場合は剣先が肩の高さか臍の高さまで振り下ろし、 打つ場所の30〜50Cmぐらい手前で手に力を加え素振りします。このとき振り下ろし方は左手で竹刀を引き下ろすようにします。この振り下ろし方は上段から振り下ろした打ち方を経験した方ならお解かりに成ると思います、決して円を描くような打ち方(斬り方)はありません。 野球・ゴルフ等も全て引き下ろしの振り方です。
尚 初めて稽古される方は真剣で刀を振ると良いのですが、その機会がない方はやや重めの竹刀を使用すると良いとおもいます。と言うのは軽いと手首を使い腕全体で振るのを忘れてしまうからです。本来の刀を振るのに手首だけでは振り切れません、腕全体が刀と一体になって動かないと物も斬れませんし強い打ちも出来ません。

切り替えし
          
    
この写真は雑誌「剣道時代」提供
 
         
      
 面や籠手の打ち方が出来てきたら次は切り返しです。切り返しは相手の左右のこめかみを目がけて交互に打つやり方です。このとき受ける方が竹刀で受けるので、その竹刀を打つものと勘違いしておる方を見かけますが、狙いはあくまでも左右の面で、竹刀の扱い方・手の返し方・振り方等を修練する基本的な 稽古です。
切り返しは正面の面打ちに始まり、次に相手の左こめかみを打ち、返して右を打ち交互に打ち続け左で打ち終わり、一歩下がって正眼に構えなおし正面を打って終わります。この時特に注意しなければ成らない事は足の位置です。足の位置によって正しい姿勢が出来ますので注意してください。正眼に構えたとき足は肩幅に開き右足を半歩前に出し、左の足は踵を1Cm程上げて蟹股に成らぬよう、両足が真っ直ぐ前を向くようにします(この時両膝を内に向けるようにすると良い)。この構えの姿勢で面や籠手などの打ちを出します。打つ場所が遠いときは左足から歩を進めてもかまいませんが、打つ瞬間は右足が前で正眼の構えと同じ足の位置で打つように心がけましょう。右足の踏み出しで打てる場合も打つ瞬間は左足を正眼の構えの右足に引付るのを忘れてはいけません。
この切り替えしが出来るように成ったら面打ち籠手うちの掛稽古に入ります。そして同時に足の運び方や体勢姿勢を覚えます。胴打ちや突きはまだ二の次で、次は体当たりです。
 
体当たり  

  体当たりは自分の姿勢や身体の中心を覚えると同時に勢い・迫力を生み出し、相手に物怖じしない心にゆとりを持てるような感覚を会得出来ます。姿勢や身体の中心を覚えると足払いや鍔迫り合いで押し負けるようなことも無くなります。
体当たりの基本は腹で当たり、身体全体の体重を臍に集め相手の臍に自分の臍をぶつけるように当たっていきます。その時腕で押したりする方がおりますが、これは体当たりとは云えません、ましてや胸より上に押したりすると相手の腰や首に衝撃を与え危険な行為で、本来の体当たりの目的と違う行為です。
体当たりのやり方は、打ち方は面打ちをしてその竹刀が受け方の面からはなれないように、自然に腕を下げ左手が臍のやや左下に来て竹刀はやや右に傾けお互いの柄の真ん中の臍前で交差してぶつかります。その時竹刀を自分の身体に引き付けるのではなく身体を竹刀に着ける様にして当たるのです。当たった反動で元の位置に戻り構えを正し体当たりを続けるのです。だいたい10回前後の体当たりをして最後に切り返しをして終わります。体当たりを受ける方は面を打たせ当たる寸前に半歩前に出て受けます。当たりの強い相手の時は両手を少し前にだして突っ張るような感じでスプリングのような役目で受けると良いでしょう。あまり多くの体当たりを受けると自身の腰を痛めることにも成りますので程ほどに考えて受けてください。又受ける方は時たま当たる寸前左右に体を捌き入り身の稽古をすると良いでしょう。それに加えたまに左右の肩で当たってやると揺さぶりにも対処できる体勢が出来てきますし、双方身体の中心を覚え悪い体勢を素早く立て直す良い稽古になります。

打ち込み稽古

  
面打ち・切り替えし・体当たり等が出来ましたら次は打ち込み稽古です。稽古は元立ちの方が空けてくれた箇所を素早く的確に正しい姿勢で打てるようにする稽古で、まずは切り替えしから入り、初めのころは面・籠手の攻撃を主にして、慣れるに従い胴・突きを加え突きが外れた時は体当たりする等の稽古で、徹底攻撃の基礎を覚え足の運び身体の動きなどを学びます。
この時に注意することは足の位置はもちろんですが目線に注意して頂きたいのです。打突する箇所を見ることなく相手の目を見て相手の全体像を見るように心がけるようにして頂きたい。そして出来るだけ激しく打ち込み息が上がったら「参りました」と言って切り返しをして終わり、下がって正座し複式呼吸で息を整えるのです、その時他の稽古を良く見て見取り稽古をすると尚良いでしょう。息が整ったら又打ち込み稽古をお願いし、それを数多く繰り返すことです。

掛り稽古

  
掛り稽古は打ち込み稽古とほぼ同じですが、今度は元立ちの空けてくれたところではなく自分が思ったところ相手のここが隙きだと思ったところに打ち込んで行く稽古です。当たっても当たらなくても思った瞬間に打つようにし、打ち込み稽古以上に激しく徹底攻撃を仕掛け息が上がったら「参りました」と言って切り替えしをして終わります。後は打ち込み稽古同様呼吸を整え数多く繰り返すことです。
この稽古のとき元立ちに捌かれた場合相手に背を見せることなく、すれ違いざまに横面なり胴を打ち体勢を整えるようにして次の攻撃を仕掛けることです。又稽古中 足払い・組討・左右片手横面等を取り入れると一層効果が上がります。(注意 足払い・組討は60歳以上の方にしない事)  
 
足払い・組討   
 
この写真は雑誌「剣道時代」提供

足払いは柔道と同じ内掛け・外掛けが有ります、主に相手の肩が自分の両腕の中、懐に入ったときに掛けます。右肩が入ってきたら相手の左肩に竹刀で押さえ右足を自分の左足で払うか引っ掛けるのです。左肩が入ったときはこの逆です。
足払いを受けた場合は我慢できれば良いですが、倒されると感じたときは頑張らずに自分から倒れることです。それは柔道等の受身と同じで、自身で倒れれば起き上がり も早く立ち直ることができます。又 倒れながら相手の足等に一撃を加えることも出来ます。そして倒した方も安心せず相手に止めを刺すか、次の反撃に備えた残心が必要です。
 
 この写真は雑誌「剣道時代」提供
組討はこの様な足払いをした後とか、片手横面を仕損じて竹刀が飛んでしまった時などに組討になります。組討は相手が「参った」と言うまで続けられます。柔道の寝技同様 絞め技・逆腕等で攻めあいますが、主の目的は呼吸の使い方で、相手が立ち上がれないように封じ込めることが主眼です。(注意 絞め技・逆腕等はあまり頑張らずに「参った」と言うこと。又 周りにいる者は竹刀をかたずけて下さい。)
足払いは正しい姿勢を覚えさせるために行いますし、組討は呼吸の使い方や身体の使い方を覚え、ある程度の荒稽古にも長い稽古にも耐えうるように成るため行います。
   

 

                                    

 

片手横面の打ち方  
   

この打ち方は入り身を覚え、体捌きを覚えるために行います。相手が正面や籠手に打ち込んで来たとき、左か右に半歩斜め前に進めながら竹刀を頭上に振りかぶり左又は右手で切り返しと同じくこめかみを狙って打ちます。このとき竹刀を持った手の拳が相手の喉元に突きを入れるがごとき構えにて、空いた手は空手の正拳のときの引き手のごとく左右の横腹を押さえ(居合いの抜きつけのときの引き手のごとく)、後足は前足の後方に位置し(決して前足の後方より外側に出さないよう)、体勢はやや前傾姿勢で小太刀の構えのようにやや横半身の形になります。
横面うちは打ちが主体ではなく入り身・体捌きが主眼です。練習で切り替えしと同じ要領で行う場合、切り替えしと違い竹刀を頭上で旋回させてもしかた有りません、主体は入り身・体捌きなのですから。この練習をすると突きなどが怖くなくなります。

 

  
胴の打ち方


切り返しで手の返しや打ちを覚えれば胴の打ちは場所が下がっただけで打ちは切り替えしと同じです。あえて注意することは打つ場所が下のため左手が右手より上がって剣先が下がって下から切り上げている形ちや、その左手が自分の身体の外に出ないようにすることです。(子供など自分より身長が低い場合はしかた有りません。) 胴の打ちは俗に言う肩からの袈裟懸けよりやや横上からの打ちになります。
真剣での試し斬りをしたことのない剣道経験者が斬ると逆胴の斬り方はまあまあですが、左からの正胴の斬り方では案外と斬れない方が多く見られます。
これは手の返しが不十分で剣道の打ち方は平打ちになってると言う事で、刃筋が通っていないためです。切り返しを十分やりましょう。

突きの突き方

  
この写真は雑誌「剣道時代」提供
突きは諸手で身体で突きましょう。人は下から身体の中心を攻められるのが嫌なもので、そこを攻めるのが一番相手に恐怖心を与え・怯ませ攻撃し易くなります。何故かと言うと自分の死を覚悟した捨て身技だからです。正攻法の突きは面打ちを肩まで斬り落とした形ち・姿勢で、手・腕で突くのではなく捨て身で身体全体で突くのです、初め喉を狙うと剣先が上ずってしまうので相手の胸を狙って突くと良いでしょう。この稽古が出来ましたら今度は左手が自分の身体から外に出ないような位置から、上から・下から・左右からあらゆる位置から突いてみるのです。この様な稽古をする事で剣先がそっぽを向かない中心を攻める剣道に成ります。
次に突きを受けたときの対処をお話します。これは高野孫次郎先生に教わったことです。先生曰く「野球のボールを取るときどの様にしてとりますか?ボールを取る瞬間引いて取りますね、手を突き出して取れますか?それと同じで突きが来たときに引いて逃げれば突きが追っかけてきて食らうことに成ってしまうのです。だから前に出れば良いのです、尚左右に少しでも動けば突きは簡単に外せますよ。突きが怖くても目を瞑っても良いから前に出る稽古をしなさい。」と教えられました。この為にも上記の片手横面の 体捌きの稽古が大事なのです。

正しい姿勢

正しい姿勢とはどうゆうことを言うのか私の考え方を述べさせて頂きます。
     
姿勢は姿に勢いと書くように勢いすなわち生きている証拠で、病気などを患っている時などは勢いは無く半分死に掛かっている状態で姿勢が良いとは言えないと思います。人間は二本の足で身体を支えており、背筋を真っ直ぐにすることが身体のために良いとされております。ゆえに二本の足の位置により姿勢は決まるものと思います。仕事やスポーツなど はそれぞれのやり方があり、その用途により足の位置を変えることにより適した姿勢をとりますが、その姿勢を長時間続ける事は出来ません。長時間続けられ背筋を伸ばした姿勢が正しい姿勢と言えるのではないでしょうか。
正座や座禅の座り方が正しい姿勢と思われます、あぐら等は長時間続けられますが背筋が曲がって良いとは言えません。
又立ち姿では肩幅ほどに両足を開き直立した状態が正しい姿勢と思われます。剣道では相手がおり、その相手に対し早く行動を起こす必要から半歩右足を前に出しその足は真っ直ぐ前を向き蟹股に成らぬように構えた姿勢が良いとされます。居合いでは正座が良い姿勢で、両膝の間に一握りか二握り開け、足は親指を合わせるか重ねるかぐらいに座るのが良く、抜きつけ等のとき足は肩幅に開き前方に対し真っ直ぐに出し後ろ足も曲がらぬよう、又前に出した足の膝も直角に曲がらぬようにした姿勢が良い姿勢で、両足と床に付けた膝の三箇所で身体を支えるのが正しい姿勢と言えます。何故ならこの足の位置が一箇所でも曲がっていると体重が膝にかかり、サポーターをしないと耐えられなく成ります。
このように正しい姿勢は両足の位置によって決まります。背筋を伸ばし複式呼吸をする腹を出した姿勢が良いと言うことです。
一日の仕事や運動を終えた後寝ることにより、また寝返りを打つことにより背筋を調整し正しい姿勢を作り出しておるものと考えます。
このように正しい姿勢を取ることにより精神の安定をえて正しい考えで行動の出来る人間に成長するものと思い、常に姿勢の事、呼吸の事を考えて行動するようにしております。

 


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